2013年11月15日

【加藤】コストだけ見ると、すごく手前にある選択肢だけを選択してしまって、結果、先送りになってしまっている部分が大きいと思うのです。ただ、今おっしゃっていたように、減容するのが良いという話がある上で、焼却炉を作る、というように話に繋がっていけば、一般の方でも理解できると思うので、そこをちゃんと伝えていくことが大事になって来ますよね。

【児玉】多分、今、日本の持っている科学技術を、きちんと住民の生活に活かしていく、それから、先ほど申し上げましたけど、色々な問題を克服しようと生まれた技術が日本を世界に押し上げたという歴史に、もう一回学ぶべき時じゃないかと思います。だから福島の問題、それから津波被害の問題、宮城、岩手、含めてですね。そこに正面から向き合うということによって、全く違った技術の体系が生まれるのではないかという気がします。

【加藤】後はトークイベントの時もおっしゃっていましたけど、除染自体も長く丁寧にやっていかなければいけないという時に、そこに若い科学者の方にコミットしていただく、ということも必要になって来ますよね。

【児玉】かつてない環境汚染問題が起こってしまっていて、マスキー法という大気中のCO2を下げるための法案がアメリカで通った時に、アメリカのビッグ3の対応は議会のロビイングに何100億円って使うわけですよ。でもホンダがCVCCというそれをクリアする低公害エンジンを作ると、1つで世の中が変わってしまう。食品検査機で我々がお手伝いして従来無理だった検査ができるようになった、次に土の問題も新しい技術が生まれつつある。次に残ってくるのは森。福島では7割の汚染地域が森林ですが、森林は一度に伐採するわけにいきませんから、これは長期戦を覚悟せざるを得ない。福島だと家のそばに森もある。森の木を全部切るなんて簡単にできるわけもない、そういう状態にあって、それをどうするかという時に、今一番可能性があるのはバイオマス発電じゃないか、と考えています。ものを燃やすということを発電に変えて、環境エネルギーということで、Feed-in Tariff(固定価格買い取り制度)をやって、これをさっき言ったようなセシウム除去の仕組みと結びつけます。二段階のちょっと複雑な仕組みになりますが、外部に放射性物質が出ないような仕組みを作って、放射性物質を濃縮して、出たエネルギーをお金に変えるという仕組みを作っていかないといけない。30年から50年とかかけて山全体を植え替えていくという作業だと、そういう風にしないとできないのではないかと思いますね。

【加藤】続けられるしくみに出来ないということですよね。

【児玉】それともう一つ、大きいかも知れないのは、そういう森林をやる時に、実はバイオマス発電というのは、機械化しないとコスト的にペイしない。今、日本のロボット工学の分野ですごく良い機械がありまして、南相馬で実証実験が行われたのですが、木の伐採や枝打ちなどを全て運転席からできてしまうのです。

ringyo

【児玉】またタワーヤーダーというのがあって鉄塔なんか建てない。タワーヤーダーを立ててケーブルを張って、木はケーブルから下げたロボットで切る。考えたら、こういう機械って日本の十八番ですよね。これらの何がいいかというと、運転席を陽圧(周囲よりも高い圧力)にして、ガンマ線の通りにくい鉛ガラスにすると被爆量は微々たるものになる。林業で作業すると言っても、これならかなり安全性の高いやり方をすることができる。作業をする人が希望の持てるような林業にしないといけません。林道も変えないといけない。今、山の中の林道はガードレールなどを作らないといけないなどのルールがあるのですが、この車は長いからガードレールなんかあったら使えない。だから、専用の道路を設計して、それ用の設備を整備していって、機械化林業ができるようにする、という具体的なステップを踏んでいく必要がある。

更にこういう再生エネルギーって行政の制度ができたり変わったりすると、急成長になったり下降局面になったりというのを繰り返しますから、そういうことの影響が少ない仕組みが必要で、政治的に放射線汚染地区に関しては安定的に動くような仕組みを作れることができれば、長い期間において国土を綺麗にしていく、環境を回復していく、可能性ある手段になると思います。森が綺麗になってくると、水も綺麗になって、山が綺麗になる、ということの持つ意味はすごく大きいと思っています。

【加藤】下流域に住まわれている方の安心も変わるとおっしゃっていましたよね。

【児玉】しかもそれを今すぐに簡単にはできないけれども、歴史的な事業として、国を上げて応援していくという道筋ができるというのは、住民の判断にも、地域の復興にも必要なことではないかと思っています。

【加藤】多分、ファーストステップとしては現状を理解するというか、状況を把握するということが全国的には必要なことで、その上で、どういう風にコミットできるかということが必要で、今日、フレコンバッグの写真をシェアしていた友人も何をすれば良いのかまだ東京にいたらまだわからないということを言っていました。

【児玉】だけど、現実を見ていただくと、色々わかることはあるし、住民の願いというのが家族一緒に暮らしたいとか、故郷を再建したいとか、もしくはもう無理だったら違った新しいところで生活を送りたいとか、色々な思いがあると思うのですよね。そういう思いの一つ一つにきめ細かく答えられる仕組みを作る、ただその中で、一つ注意しなくてはいけないのは、おそらく住民の生活自体を生きていくために支援していく問題と、時間のかかる環境回復というのが、両方とも大事な課題じゃないかという点です。今、生活支援されているとしても、環境が汚ければ、長期的には生活が絶対に成り立たないと思います。

【加藤】続く仕組みではなく、どこかで打ち切りみたいな話になってしまいますよね。

【児玉】今、避難して生活していても、綺麗にするために、色々な努力が行われるとしたら、戻って来たいという人も多いかも知れない。最初に申し上げたように、半分の方が判断できない状況に置かれている時には、生活支援と環境回復を両方ともやっていくということが、とても大事なんじゃないかと思っています。

そうすると、最後にすごく言いたいのは、先ほど言ったクライシスの時、今まで見えてなかった本質が見えてくると思うのです。人間が住みたい環境というのはどういうところが良いのだろうか。福島に合うのは一つの地産地消のような、色々な職場や工場だとか、海の恵み、山の恵み、そういうものとあわさったところにあるとすると、本当の意味での被災者支援というのは、環境の回復なくしてあり得ないのではないかと。そういう意味では、水俣でずっと行われていたような、海の底の水銀を除く事業だとか、富山で行われていたカドミウムを除く事業だとか、そういうものを福島でもきちんとやらないといけないし、これからきっとそういう話になってくると思います。

ですから、除染という言葉より、環境回復、日本の国土の環境の回復なのです。そしてそれは、これからの日本の持続可能な社会につながる技術の体系を作る、林業の復興や、水産業をどう育てていくかということを、福島の復興だけの問題ではなく、国民全体の問題と捉えていただきたい。先ほどおっしゃったクライシス・レスポンス、クライシスにあってもっとも大事な価値とか、メカニズムとは何か、ということを知るのが、我々の科学技術がもっと生活に密着したものになれるチャンスになるのではないかという感じを持っています。

【加藤】今日はありがとうございました。

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児玉 龍彦 / 東京大学アイソトープ総合センターセンター長 / 東京大学先端科学技術研究センター教授

1953年、東京都生まれ。1977年、東京大学医学部卒業。東京大学医学部助手、マサチューセッツ工科大学研究員などを経て、東京大学先端科学技術研究センターシステム生物医学教授。2011年4月より東京大学アイソトープ総合センター長を併任。2011年3月11日の震災直後から、南相馬市を中心に福島の除染活動に携わる。7月27日の衆議院厚生労働委員会での参考人演説が、YouTubeで100万回以上再生されるなど、大きな反響を呼び、英科学誌『ネイチャー』で「科学に影響を与えた今年の10人」に選ばれた。現在も、南相馬市除染推進委員長、楢葉町除染評価委員長として、現地での除染活動にあたる。著書に『内部被曝の真実』(幻冬舎新書)、『放射能から子どもの未来を守る』(金子勝氏との共著、ディスカヴァー携書)、『逆システム学』(金子勝氏との共著、岩波文庫)、『考える血管』(浜窪隆雄歯との共著、ブルーバックス)、『システム生物医学入門』(仁科博道氏との共著、羊土社)等がある。

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