地震大国・日本に住みながら、地震のことについて知らない人って実は多くない? そのひとり、文系女子・J子と一緒に、地震のメカニズムや今後起こりうる地震への備え方について一緒に学び、考えていきましょう!

icon_aA:独立行政法人防災科学技術研究所勤務の30代地震マニア男子。ニックネームは「アジー」。

icon_jJ子:静岡県出身、都内荒川区在住の20代文系OL。ひょんなきっかけでアジーと出会い、地震について学ぶことに。ミーハーで情報に流されやすいのがたまに傷。

【A】今回は予告通り、J-SHIS Mapで今一番HOTな地図といえる「長期間平均ハザード地図」についてご紹介したいと思います。

【J子】以前紹介した「確率論的地震動予測地図」もそうでしたが、またまた長くて覚えにくい名前ですね……。なにを意味する地図なのかがさっぱりイメージできないです。

【A】スミマセン……。

【J子】J-SHISの解説ページには、「数百~数万年に一回というまれな地震によって起こりうる揺れの大きさを示す地図」と書いてありました。再現期間が10万年、5万年、1万年……って言われても、正直ピンとこないっていうか……。

【A】 今日のJ子さんは、ツッコミ厳しいですね。

【J子】だって、地球史年表でみると

10万年前:現代人(ホモ・サピエンス)がアフリカを出て世界各地に拡がった
5万年前:クロマニョン人が出現
1万年前:日本は縄文時代で, 土器が作られた
1000年前:平安時代

とかですよ。平安時代とかなら、大きな地震の記録が書物に残っていたりするのかな〜くらいに思いますけど。そもそも10万年前とか、文明がまだ体験したことがないような揺れが起こるかもしれないってことを、どうやって予測してるんですか?

【A】それは、「恐竜」の例がわかりやすいかもしれませんね。
その昔、恐竜が地球上に存在していたことはみなさん知っていますよね。でも、実際に見たことがある人は誰もいません。恐竜の化石が発掘された地層から、恐竜のいた時代を割り出しているわけです。

同じように、地下の構造を調べていくと、地層のズレなどから、その場所で過去にどんな地震が起こったのかがわかるそうです。日本の地下には、数万年に一回の頻度で大きな地震が起こっていることを示す記録が、いたるところに埋まってるんですよ。

【J子】ええ!そうなんですか?

【A】その中から、地震本部が長期評価している活断層をJ-SHIS Mapで表示させるとこうなります。

※「長期間平均ハザード地図」の上に左の震源断層のチェックボックスを全てオンにして表示しています

fig1

より詳しい活断層に関するデータは、産業技術総合研究所の活断層データベースでも見ることができます。

【J子】わー、日本列島の地下は、活断層だらけですね。以前、「Think Like A Bird」で読んだ、神社や石碑など「土地に残っている記録」に関する記事を思い出しました。地面の中にこそ、地震が起こる確率やその大きさを予測する際に重要な情報や証拠が刻まれているんですね。

【A】そういうことです。たとえば1万年に1回の頻度で起こる内陸活断層地震を、ある短い期間で考えてみると、確率が非常に小さいのです。なので、「確率論的地震動予測地図」では、まれに起こる大きな地震のアラートがほとんど見えてこないことがあるんです。

【J子】「確率論的地震動予測地図」では、30年、50年といった比較的短周期で起こる地震のみが考慮されているようなイメージなんですか?

【A】違います。「今後30年、50年の確率論的地震予測地図」でも、1万年に1回起こる内陸活断層の地震の影響は考慮されています。でも、短い期間にある地点が見舞われる揺れの大きさの確率(=地震動の超過確率)として表現した時に、数百年に1回起こる海溝型の地震の影響と同じ地図上で見ると、相対的に値が小さすぎて色としては見えてこないのです。

でも、今から30年、50年という期間だと、みなさんが自分と関係のあることとしてイメージしやすいですよね? そういう意味で2つの地図の役割は、氷山と似ています。

航海中、海面から出ていて目に見える部分の氷山(=今後30年、50年といった比較的短期間の予測)はイメージしやすく、衝突しないように注意・回避することができますが、実は、水面下にある目に見えない部分(=数万年に一回の頻度で起こる揺れ)にも同じように注意しなければならない。

fig2

「海溝型地震」は数十年から数百年、「陸域の活断層で発生する地震」は数千年から数万年に一回程度の頻度で発生することが知られています。これらは、J-SHIS Mapの「地震活動モデル」のボタンから、評価されている各地震を「平均発生間隔」の列でソートして見ることができます。地震の再現期間が長いということは、発生頻度がより低い地震と言い換えることができます

fig3

見たい震源断層の右端にあるチェックボックスをチェックし、「地震活動モデル」をクリック。

fig4

「平均発生間隔[年]」の右横にある▶をクリックすると、昇順、降順でソートすることができます。

長期間平均ハザードの再現期間と影響がよく見える(地図上に表現されている)地震の種類を整理するとこんな感じになります。

再現期間10万年相当の地図  震源を予め特定しにくい地震を含むほぼ全ての地震
再現期間1万年相当の地図 ほぼ全ての海溝型地震と主要活断層帯の地震
再現期間1000年相当の地図 主要な海溝型地震

つまり、想定しうるほぼすべての地震による揺れを考慮できるのが10万年の「長期間平均ハザード」なんです。先ほどの例で地震ハザードを氷山として表現しましたが、まさしく氷山全体を見える化した地図と言えると思います。ある強さ以上の揺れの大きさに見舞われる確率(=地震動の超過確率)と揺れの大きさの関係は、以前ご紹介した「地震ハザードカルテ」の中に出てくる「ハザードカーブと影響地震カテゴリー」のグラフでも見ることができるんですよ。

image009

30年超過確率が小さくなる(=より低頻度で起こる地震を考慮する)につれて、揺れの大きさ(=工学的基盤上の最大速度)が大きくなっていることがわかります。

【J子】「長期間平均ハザード地図」のすごさがなんとなくわかってきました。

それにしても、「再現期間10万年相当の計測震度」の地図をみると、日本のほとんどの地点で震度6弱以上じゃないですか! 日本のどこにいっても、地震の危険からは免れないってことですね。

fig6

【A】   そういうことですね。

【J子】ところでこの「長期間平均ハザード」は、J-SHISの2012年版から新たに追加されたそうですが、2011年の東北地方太平洋沖型地震の前にはなかった地図なんですか?

【A】そうなんです。震災直後、「なぜ地震学で予測できなかったんだ?」という声が多く聞かれたこともありました。信頼を取り戻すべく、取り組みを続け発表されたのがこの地図なんです。

【J子】なるほど・・・。「長期間平均ハザード」は、震災を教訓に、地震動予測の信頼性を高め、反省をもとに追加された画期的な地図だったのですね。

一般人としては、「地震はいつ起きるの? 起きたらどれくらい被害があるの?」ってことばかりが気になってしまいがちですよね。

でも、日本に住んでいる限り、全国で見るとどこかで数十年に1回は大きな被害が出る大地震は十分に起こりえるのは明らかなわけで。それをいろいろな角度からアプローチして予測して、精度を高めようとしているのがこの取組みなんですよね。

【A】そうです。未来に日本で暮らしている人の命をひとりでも多く救うための努力と新しい研究が粛々と進められています。

【J子】そのためにも、より多くの人がこの地図の内容を理解して、備えができていたら、すごくいいですよね。

【A】そうですね。地震というとても長いスパンで起きる現象については、数万年に1回の頻度で起きる地震への対策ができていなければ、本当の意味での「地震対策ができている」とは言えないのです。

参考文献:
・J-SHIS 学ぼう 長期間平均ハザード地図
http://www.j-shis.bosai.go.jp/avg-hzd-map

・Wikipedia 地球史年表
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0%E7%90%83%E5%8F%B2%E5%B9%B4%E8%A1%A8

関連記事

第3回:Blabo! × ユレッジ コラボ企画 世界一地震が起こる日本を、世界一被害が生まれない国にするための防災アイデアレビュー 【A】前回ご紹介したJ-SHIS Mapで断層情報が見れる件、関西在住のお友達に教えてあ […]

詳細を読む

ユレッジからのお知らせお知らせ一覧へ

今、読まれている記事

丸山 宏 / 統計数理研究所副所長・教授

「レジリエンス」。自己回復力などとも訳されます。このことはこの1年のユレッジのサブテーマでもありました。1年以上前にこの言葉を最初に僕に教えてくださったのが、統計数理研究所副所長・教授の丸山宏さんでした。2015年3月1 […]

詳細を読む

長谷部 雅一(はせべまさかず) / Be-Nature School スタッフ / 有限会社ビーネイチャー取締役 / アウトドアプロデューサー / ネイチャーインタープリター

誰しもが一度は「アウトドアって防災に役立つのでは?」と考えたことあるのではないでしょうか。アウトドアプロデューサー、ネイチャーインタープリターの長谷部 雅一さんにうかがったお話は、アウトドアの経験が防災に役立つ、という話 […]

詳細を読む

渡部 慶太 / (特活)石巻復興支援ネットワーク 理事

「復興は進んでいますか?」そういう質問をたまに耳にすることがあります。石巻復興支援ネットワーク 理事の渡部 慶太さんに寄稿いただきました。2011年以前と以降で東日本大震災は社会起業と呼ばれていた世界にどう影響を及ぼした […]

詳細を読む

江口 晋太朗 / 編集者 / ジャーナリスト / NPO法人スタンバイ理事

今日、防災について考えるにあたって、欠かすことのできないものが「情報」です。編集者、ジャーナリストでNPO法人スタンバイ理事でもある江口晋太朗さんに、防災とジャーナリズムについて改めてお話をいただきたい、というのが今回の […]

詳細を読む

小島 希世子 / 株式会社えと菜園 代表取締役 / NPO農スクール 代表

ユレッジでまだ食べることと防災のことについて扱っていないという時に、ご相談することにしたのがえと菜園代表取締役、NPO農スクール代表の小島希世子さんでした。著書『ホームレス農園: 命をつなぐ「農」を作る! 若き女性起業家 […]

詳細を読む

嶋田 洋平 / らいおん建築事務所 代表 / 北九州家守舎代表取締役 / 建築家

私たちは、自分の街のことをどのくらい知っているでしょう?家と駅とコンビニを結ぶ導線以外の道を通ったことはありますか?駅とは反対側の道を歩くとどんな景色が広がっているのか知っていますか?そして、災害が起きた時、またもう一度 […]

詳細を読む

松下 弓月 / 僧侶

僧侶の松下弓月さんに寄稿いただきました。ユレッジで、防災と心のケアについて、という難しいお願いに辛抱強く取り組んでいただきました。防災における仏教の役割を、現実的な解として、提示いただけたと思います。 こんにちは。僧侶の […]

詳細を読む

高橋 憲一 / Hack For Japan スタッフ / イトナブ理事

震災から3年余りを過ぎて、ITと防災の分野で、ここまで行われてきたことを振り返って俯瞰し、これからの取り組みの見通しが効くようにしたい、それがHack for Japanの高橋憲一さんへのお願いでした。テクノロジーの未来 […]

詳細を読む

徳島 泰 / 青年海外協力隊(産業デザイン) / FabLab Bohol マネージャー / 比国貿易産業省 デザインディレクター

今回のテーマは「プロダクトデザイン×防災」ということで、フィリピンのボホール島で青年海外協力隊として活躍する徳島泰さんにスカイプでインタビューしました。国は違えど共通で浮かび上がる災害時の課題。防災において、プロダクトデ […]

詳細を読む

鈴木 さち / 東北大学大学院工学研究科都市・建築学専攻博士課程後期1年 / RAW

東北大学大学院工学研究科都市・建築学専攻博士課程後期1年の鈴木さちさんにRAW(リスク&アーキテクチャー・ワークショップ) 石巻をレポートいただきました。イベント・レポートのみならず、そこに至るまでの経緯も含めて、丁寧に […]

詳細を読む

北村 孝之 / NPO法人ボランティアインフォ 代表

災害ボランティアセンターをご存知でしょうか。ボランティア希望者とボランティア団体をつなぐ、NPO法人ボランティアインフォの北村 孝之さんにユレッジでインタビューしました。災害時、災害後、求められる中間支援がボランティアの […]

詳細を読む

畠山 千春 / 暮らしかた冒険家

2011年3月11日の東日本大震災、その後の原発事故。誰しも、とは言いませんが、一瞬「今、住んでいる場所を離れる」ことを考えた人は多いのではないでしょうか。ユレッジでは糸島シェアハウスに住む、暮らしかた冒険家、畠山千春さ […]

詳細を読む

野田 祐機 / 公益社団法人助けあいジャパン 代表理事

公益社団法人助けあいジャパン 代表理事の野田 祐機さんに寄稿いただきました。全国47都道府県から2,000人もの学生を東北へ連れて行く「きっかけバス」。復興や防災を自分ごとにするための助けあいジャパンのプロジェクトです。 […]

詳細を読む

児玉 龍彦 / 東京大学アイソトープ総合センターセンター長 / 東京大学先端科学技術研究センター教授

東京大学アイソトープ総合センターセンター長 / 東京大学先端科学技術研究センター教授の児玉龍彦さんに、ユレッジでインタビューして来ました。近著、『放射能は取り除ける 本当に役立つ除染の科学』の内容を踏まえ、南相馬市を中心 […]

詳細を読む

小泉瑛一 / 株式会社オンデザインパートナーズ / 一般社団法人ISHINOMAKI 2.0 理事

株式会社オンデザインパートナーズ、一般社団法人ISHINOMAKI 2.0理事の小泉瑛一さんは、震災直後から東日本大震災の被災地、宮城県石巻市に入り、ほぼ常駐に近い形で、現地の方々をはじめとした様々な方々と一緒になってま […]

詳細を読む

鈴木 良介 / 株式会社野村総合研究所 ICT・メディア産業コンサルティング部所属

株式会社野村総合研究所ICT・メディア産業コンサルティング部の鈴木良介さんに寄稿いただきました。鈴木さんは『ビッグデータビジネスの時代 堅実にイノベーションを生み出すポスト・クラウドの戦略』のほか、ビッグデータに関する執 […]

詳細を読む

三橋 ゆか里 / ライター・記者

ライターの三橋ゆか里さんは、日本のみならず、海外のWEBサービス、アプリ、スタートアップ事情にも精通しており、様々なメディアに執筆されています。ユレッジではテクノロジー企業やスタートアップが、災害時、また、防災に、どのよ […]

詳細を読む

2013年06月19日更新

「その時Webが出来ること」

和田 裕介 / 株式会社ワディット代表取締役 / 株式会社オモロキCTO

和田裕介さんは、人気サイト「ボケて」を初めとした、様々なWebサービスを手がけるエンジニアです。和田さんには震災を受けて、自身が開発したWebサービスを振り返りながら、自分自身の経験と、これからWebサービスが防災に果た […]

詳細を読む

渡邊 享子 / 日本学術振興会特別研究員 / ISHINOMAKI2.0

渡邉享子さんは、研究者でありながら、東日本大震災以降、ISHINOMAKI2.0のメンバーとして、石巻に居住しながら実践的なまちづくりに取り組んでおられます。その石巻での活動を踏まえ、社会(コミュニティ)と環境のデザイン […]

詳細を読む

松村 太郎 / ジャーナリスト、著者

ジャーナリストの松村 太郎さんは、現在、アメリカ西海岸を中心に活躍されています。ユレッジには今年3月、被災地を取材したことを下地に、震災の記録と記憶の情報化について、またそこにある「学び」についての示唆をいただきました。 […]

詳細を読む

児玉 哲彦 / フリービット株式会社 戦略デザインセンター デザイナー

フリービット株式会社 戦略デザインセンター デザイナーの児玉 哲彦さんは、自社において、製品開発やブランド醸成、プロジェクトマネージメントなど様々な領域で、デザインをどう実際のアクション・プランに落とし込んでいくか、デザ […]

詳細を読む

2013年04月09日更新

「ユレッジとは?」

加藤 康祐 / 株式会社イーティー 代表取締役社長 / プランナー

ユレッジは、日本の「揺れやすさ」と地震防災を考えるサイトです。 ユレッジは: 揺れの「ナレッジ」(知)が集まるメディアであり、 揺れについて学ぶ「カレッジ」(学び)であり、 揺れと日々の暮らしの関わりを考える「ビレッジ」 […]

詳細を読む

防災に関わる私が『想像ラジオ』を無視できない3つの理由 あじー なぜいま、災害作品レビューを書くのか 東北地方太平洋沖地震の発生から5年が経ちました。私たちは震災を契機に地震や災害とどう向き合うべきなのか?いまだ確実な答 […]

詳細を読む

アイデアの実現可能性、そして、ハッカソンという方法論によるそのアイデアの実現可能性、それらが地震防災にどう役立つのか。ユレッジではアイデアソンに続き行われた「Race for Resilience」のハッカソンを、スター […]

詳細を読む

第3回:Blabo! × ユレッジ コラボ企画 世界一地震が起こる日本を、世界一被害が生まれない国にするための防災アイデアレビュー 【A】前回ご紹介したJ-SHIS Mapで断層情報が見れる件、関西在住のお友達に教えてあ […]

詳細を読む

'